蟹取県のカニダー【第5話:そして海底かに牧場へ】

砂像合成_Wide

「ま、いいや。帰ろう。」振り向くカニダーを待っていたように、
その背後に立つ者がいた。

鉢合わせて目があい、驚くカニダー。

その顔は目も口もなく大きなひとつの星があるだけ。まさにモノノケ。

さらにその右腕はヒジから先が大きなカニの爪になっている。

カニダー「ちょっと、びっくりさせないで下さいよ、もォ〜(笑)。
さ、僕は急いでるんで…」

額の前に手のひらを立て、脇を通り過ぎようとするカニダー。
輝きを消し去り、驚くほど凡人に成り下がっていた。
星ヅラの右手の爪が、そんな彼の行く手を阻む。さらに怪異は続く。
突き出されたその爪がみるみる通常の手に戻っていくのだ。
ホシズラの一部、カニ爪の手だけは幻だったのか…?
しかし星ヅラ本体は依然そこに存在している。カニダーのサル芝居は続く。

カニダー「ああ、そう、そう。アッチが鳥取港でねェ、逆は境港です…」

とぼけつつも、カニダーは星ヅラのその人差指がさす方を見る。
その先には星ヅラが4人、海岸波打ち際に立っていた。

カニダーのサル芝居も、ここに至ってさすがに陰りをみせた。
こんな時、人はいったいどんな行動をとるものだろうか…。
そんな思いがカニダーの頭をよぎったその刹那、

「イヤ…。あなたは人であり、カニでもある。つまりカニの化身だ。」

目の前の5人が頭の中に侵入し語りかける。テレパシーというやつだ。

「そして我々も同じくカニの化身。先ほどのあなたの闘いを見させて頂いた。」

「君の熱意が届いた。その熱意は認めている。そうだね兄者。」

「ああ、その通り。ただ彼にないのはブランド認定。」

「その“証”を、あなたに授けたい。その為に我々はここに現れたんだ。」

「そう。でも無条件で、とはいかない。」

「あなたに勇気があるなら、我々についてくるとよい。」

カニダーの脳内に、暗い海の底の映像が広がる。

暗闇。

恐れをのいだくカニダーの、その恐怖をやわらげる暖かい光が脇に近く。

泳ぐ星ズラの、その顔の星の発光だった。

気づくと、5人とともに深い海の底を、カニダーも泳いでいた。

5人の顔の光が水中を照らすたび、勇気がみなぎる。

辿り着いたのは、カニのために築かれた5つの魚礁からなる、海底かに牧場。

その最初の入口に差し掛かったところで、5人は横にならび、

胸にたたんであったメッセージを開いて見せる。

「恰幅がいい」

「重量感」

「脚がそろっている」

「色合い鮮やか」

「身入りがいい」

「我らは、カニ取団、五輝星(いつきぼし)。君にこの5つの特徴を授けよう。」

そしてカニダーの特訓が始まった。

 

【第6話:カニダーの帰還】に続く


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