蟹取県のカニダー【第3話:鳥取グルメ怪人VSカニ戦士】

「オレの町でずいぶん飛ばしてくれるじゃねェか…」

鋭い眼光に不敵な笑みの警官。制服の裂け目がみるみる伸び広がる。

ビフテキの香りと湯気が、あたりに充満する。

「ええ!カニダーさんよォ!! ムフゥー!!」

怒号と鼻息の勢いで、遂に制服がはじけ、破片が周囲に飛び散る。

カニダー「ヌ ! ヌゥぉおおォオオ!!!」

むき出しになった胸に、大きく55の文字。

カニダー「ごじゅうご…? いやオレインゴーゴー、まさか貴様は!!」

「そう…。俺は 鳥取グルメの刺客、鳥取和牛怪人ワギュウダー‼ 」

鳥取の名をゆがめ蟹取にするなんざァ、このオレが許さねェ!」

鳥取和牛の化身ワギュウダーが、服していた極上のアバラ肉を露わにした。

口の中に蘇る、じゅわっと広がる肉汁の記憶にひたり、
一瞬目をとじるカニダーだったが、誘惑を振り切るようにまぶたを開き、叫ぶ。

カニダー「出たな!ワギュウダー!サシ霜降り、その見た目の美しさだけでは
語り尽くせぬその魅力! だがしかし! 県の頭はカニが取る!」

ワギュウダー「そうはさせん!俺はこの良質な脂肪で全国制覇を狙っている!
否もはや! 次なる世界制覇までコマを進めているのだ! これを見ろ、カニダー!」

カニダーが示された方向に目をやると、

そこには熱く沸騰した鍋を前に、女性が椅子に縛りつけられていた。

カニダー「み!みや子さん!」

情景のシュールさにもまして彼を驚かせたのは、

縛られているのが自分が好意をよせている女性、「食乃みや子」その人だったからだ。

みや子「助けて!マコトさん!」

ワギュウダー「だめだ!本名で呼ぶんじゃないみや子さん!」

みや子「助けて!カニダー!あ、ああ!」

みや子の眼前に見事に薄くスライスされた鳥取和牛をかざす。

サシの入ったピンク色の大きな花びらのような肉で、みや子が隠れた。

カニダー「やめろ!ワギュウダー!」

制す声をあざ笑い、ワギュウダーは沸騰した鍋に肉をくぐらせ、

淡くゆで色のついたその袖をゴマダレに浸した。

ワギュウダー「どうだカニダー。鳥取和牛は肉質日本一
ふっ。貴様のシャブも形無しだなァ。」

挑発しながら、ワギュウダーの箸がみや子の口に薄切り肉を運んだ。

カニダー「やめろ!ワギュウダー!」

みや子「…やっぱりウマ!」

カニダー「ああ!みや子さん!!

カニだけだって言ってたクセに!しかもなんだよ“やっぱり”って!」

ワギュウダー「ガハハハハハハ!」

打ちひしがれるカニダーであった。

 

【第4話:ワギュウダーの刻印】に続く


TOPICS