蟹取県のカニダー【第2話 : 甲殻衣類のカニダー】

第2話

あれから。

カニの帽子にカニの衣装で父を手伝う漁の姿も板につき、

皆からの愛称はカニキャからカニダーに変わった。

手伝いで始めた漁師の世界も嫌いではなく、

それどころか、カニへの愛着が日に日に増していく。

そして神が、いや、カニが私に、

甲殻衣類を与えたからには、何か大きな使命があるのではないか…、

と自問するようになった。

「そう、もっとビックな…。」

彼はいつものように鬱々とそんなことを考えながら、

今日は気づくと年の瀬の港市に来ていた。

カニ水揚げ量、カニの消費量、ともに日本一の、この県。

市場には地元の人に混ざり、全国から多くの観光客が集まり、

みな一様にカニを前に高揚感に溢れている。

「…ここは。人々の“カニ愛”で満ちている!」

カニダーは気づいた。

地元の人間にはあたりまえ過ぎて気づけずいたが、

人々の、この“カニ愛”。 これこそが、

カニの化身となって水揚げされた私の、この魂を突き動かしている!

カニダーはカニの化身として、

自分がこの県の頭を取る。そう心に誓った。

そして誓いを忘れぬよう、鳥取県を〝蟹取県〟と呼ぶことにした。

「いや、せっかくなら皆にもそう呼んでもらおう。」

この日を境にカニダーは〝蟹取県〟の名で鳥取県を広める戦士となった。

カイザーブーツに腰ベルトを新装、

〝カニ目〟と呼ばれる、英国の赤いオープンカーを購入し、

松葉がにのように高貴で見栄えのするよう身だしなみを改める。

その日からカニダーは〝蟹取県〟と名付けたホームグランドを駆けまわり、

とにかく人の目をひく行動をとるようになった。

しかし当然、それを良く思わない者も現れる。

この地に潜む、鳥取グルメ怪人たちだ。

赤いマシンで国道9号線を走るカニダー。

「キキキキキ…!!!!!!!」

突如、急停車。タイヤが白煙を上げる。

行く手を阻んだのはイカツイ警官。なぜかアメリカン・ポリス姿。

「ポリスアカデミーの観過ぎか?」

いぶかしむが、しぶしぶ誘導に従うカニダー、

大山(だいせん)をのぞむP.A.で愛車を停め免許証を探す。

ふいに何かが旨そうに焼ける匂いが鼻をかすめた。

香ばしいビフテキのようなその匂いの主は警官だった。

彼の制服に広がっていく赤黒い亀裂から匂いは発していた!

 

【第3話:鳥取グルメ怪人VSカニ戦士】に続く


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