蟹取県のカニダー【第1話 : かにっこ町のカニキャ】

第一話サシエ

カニ水揚げ量、日本一の県があった。

県はカニだらけ。人々はカニが好き。カニを贈るのも好き。

その県のある町に、毎日カニの帽子を被って暮らし、

皆からカニキャ(ップ)の愛称で親しまれている青年がいた。

彼のその帽子には秘密があった。

被るたびに、また洗濯するたびに形を変え、

みるみる本物のカニに近くのだ。

この不思議な現象のことを、帽子をくれた父に聞いても答えない。

少し怖かったが、それでもカニキャは毎日帽子を被った。

それだけこのカニキャップが好きだった。

ある、クタクタに疲れた日、カニキャは帽子を被ったまま眠ってしまった。

しばらくの眠りの後、たくさんの寝汗とともにカニキャは起きた。

「冬なのに暖かいな…。」

慌ててシャワーを浴びるカニキャ。帽子を被ったままだったことに気づく。

「いかん、いかん。」

帽子に手をやる。

「あれ…、硬い…。」

洗面鏡を見て、カニキャはさらに驚く。

なんと!
鏡に映った自分は、頭から足先まですっかりカニ色になっていた。

ちょうどその時刻、寝ないで明日の漁の仕度をしていた父にせがみ、

連れだって病院の深夜診察窓口へ向かう。

しかし父の向かった先、車がたどり着いた先は、なぜか病院でなく漁港だった。

まだ明けやらぬ暗い漁港で、タバコに火をつけ、

父が語りだす。

「お前には、俺が水揚げしたカニの魂が宿っている。」

「え…?」

耳をうたがうような発言に息を飲んだカニキャ。

「その証拠が、その甲殻衣類だ。」

「は…?」

さらに理解に苦しむ父親の言葉に言葉を失った。

「甲殻衣類? オヤジ、ふざけんなよ!」

「イヤでも衣類だから大丈夫。脱いだらいいだけだから。」

「…あ。 なんだ、脱げるの?! じゃあ問題ないよ。」

「父親の俺にはストレッチ体操を教える星人の魂が宿っているのだ。 その俺の柔軟ボディを受け継ぎ、
お前も脱皮できるようになったというわけだ。
ぬは、ぬはははは!」

「ぬはははは! じゃないよ、もぉ!
早く言ってくれりゃ…。 こんなとこまでわざわざ出かけることなかったじゃんョ!」

「そんなことより今日は父さんの漁の手伝いをするのだ!
そのかっこのままでな!」

 

【第2話:甲殻衣類のカニダー】に続く


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